マイクロテクノロジー

ナノテクノロジーによる単一細胞操作と白血病原因タンパク質の高感度検出

(1) 課題の目的

mt01_01big
光圧力を用いた
1細胞操作·濃縮に成功

慢性骨髄性白血病(CML)は、造血幹細胞に生じたBCR-ABL融合遺伝子により発症するが、ABL阻害剤イマチニブ の登場により治療が大きく進歩した。イマチニブの臨床的効果は、骨髄血のBCR-ABL遺伝子定量により判定されるが、残存腫瘍細胞の検出限界は 3/104個レベルにとどまる。一方、残存腫瘍はCD34+CD38-の造血幹細胞分画に存在するため、この分画のみを100倍に濃縮すれば1/106個 レベルの検出が可能となる。そこで、我々は短時間で白血病幹細胞の濃縮とBCR-ABLの検出をベッドサイドで行えるデバイスを開発し、イマチニブ治療の 詳細な効果を判定可能とする。

(2) 課題の目標(ミッションステートメント)

ベッドサイドでの検査、少量サンプルでの解析、解析時間の短縮、経済コスト削減、簡易操作を可能とし、検査に必要な一連の操作(細胞標識、細胞分離·濃 縮、細胞からのmRNAの抽出、cDNA転写後PCRによる増幅、アレイによる検出)を集積化したマイクロデバイスを作製する。

(3) プロジェクトの成果

仮想化画像と実際の内視鏡画像との融合技術
mt01_02big
再現性·定量性に優れた、
高品質DNAアレイの作製に成功
  • (1) 光圧力により高い回収率·純度で細胞の分離を達成した。
  • (2) mRNA、DNAを抽出するナノ構造体をマイクロチップ中に作製することに成功した。
  • (3) 定量的PCR法にて、骨髄細胞全体から検索したBCR-ABLが陰性であっても、骨髄幹細胞·前駆細胞では陽性となり、BCR-ABLの検出感度は高くなることを示した。
  • (4) イマチニブ有効例において前駆細胞は正常クローンに置き換わるが、CML細胞は幹細胞分画に残存することを明らかとした。
  • (5) 核酸化学技術を用いた特殊キャプチャープローブアレイにより、サンプル標識不要な次世代マイクロアレイの開発をおこない、迅速な遺伝子変異の検出を可能とした。